内部統制とは何か?まず押さえたい基本的な考え方
- 4月1日
- 読了時間: 6分
更新日:6月19日
はじめに
上場会社の経理、内部監査、法務、総務、経営企画、情報システムなどの部門では、「内部統制」という言葉を耳にする機会が多くあります。
内部統制というと、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度、いわゆるJ-SOX対応や、監査法人に提出する資料の作成、業務フロー・RCM・チェックリストの整備を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、内部統制は、単なるJ-SOX対応や監査対応のための仕組みではありません。会社が健全に事業を運営し、正確で信頼できる情報を報告し、法令等を遵守し、会社の資産を適切に保全するための基本的な仕組みです。
本記事では、内部統制を学ぶ最初の入口として、内部統制の基本的な考え方を整理します。
内部統制とは何か
内部統制とは、会社の目的を達成するために、業務の中に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスをいいます。
ここで重要なのは、内部統制は「特定の部署だけが行う作業」ではないという点です。
たとえば、次のような日常業務も内部統制の一部です。
取引開始時に取引先審査を行う
一定金額以上の支出について上長承認を得る
売上計上前に契約書や検収書を確認する
決算仕訳を作成者とは別の責任者がレビューする
システムのアクセス権限を定期的に見直す
内部監査で規程どおりの運用状況を確認する
このように、内部統制は、会社を適切に運営するためのルール、手続、組織体制、情報伝達、監視活動を含む広い概念です。
経理部門や内部監査部門だけでなく、営業、購買、製造、人事、総務、情報システムなど、会社の各部門の日常業務の中で運用されるものです。
内部統制は「チェック」のためだけのものではない
内部統制という言葉から、「ミスを防ぐ」「不正を防ぐ」「承認を取る」といったチェック機能をイメージする方は多いと思います。
もちろん、ミスや不正を防ぐことは内部統制の重要な役割です。しかし、内部統制の目的はそれだけではありません。
業務を効率的に進めること、会社の情報を正確に報告すること、法令等を遵守すること、会社の資産を守ることも、内部統制の重要な目的です。
たとえば、承認ルールが明確であれば、誰がどの範囲で判断できるのかが分かり、業務は円滑に進みます。業務フローが整理されていれば、担当者が変わっても一定の品質で業務を継続できます。情報伝達の仕組みが整っていれば、重要な問題を早期に把握し、改善につなげることができます。
内部統制は、会社の活動を制限するためだけのものではなく、会社が継続的に成長していくための経営基盤でもあります。
内部統制の4つの目的
内部統制には、基本的に次の4つの目的があります。
業務の有効性及び効率性
報告の信頼性
事業活動に関わる法令等の遵守
資産の保全
「業務の有効性及び効率性」とは、会社の事業目的を達成するために、業務が有効かつ効率的に行われるようにすることです。
「報告の信頼性」とは、財務情報や開示情報など、会社が内外に報告する情報の信頼性を確保することです。上場会社においては、財務報告の信頼性が特に重要なテーマとなります。
「事業活動に関わる法令等の遵守」とは、会社法、金融商品取引法、税法、労働法令、個人情報保護法、業界規制など、事業活動に関係する法令や規範を遵守することです。
「資産の保全」とは、現金預金、売掛金、棚卸資産、固定資産、情報資産など、会社の資産を不正、誤謬、紛失、流出などから守ることです。
この4つの目的は、それぞれ独立しているように見えて、実務上は相互に関連しています。
たとえば、売上計上プロセスを適切に管理することは、報告の信頼性だけでなく、業務の効率性、法令等の遵守、売掛金という資産の保全にも関係します。
4つの目的については、次回の記事で詳しく解説します。
内部統制の6つの基本的要素
内部統制は、4つの目的を達成するために、次の6つの基本的要素から構成されます。
統制環境
リスクの評価と対応
統制活動
情報と伝達
モニタリング
ITへの対応
「統制環境」は、経営者の姿勢、組織風土、取締役会や監査役等の機能、権限と責任など、内部統制全体の土台となるものです。
「リスクの評価と対応」は、会社の目標達成を妨げるリスクを識別し、そのリスクにどのように対応するかを検討するプロセスです。
「統制活動」は、承認、照合、職務分掌、証憑確認、上長レビューなど、具体的な方針や手続をいいます。
「情報と伝達」は、必要な情報が適時かつ適切に把握され、関係者に正しく伝えられる仕組みです。
「モニタリング」は、内部統制が有効に機能しているかを継続的に評価し、問題があれば改善につなげる活動です。
「ITへの対応」は、会計システム、販売管理システム、ワークフロー、クラウドサービスなど、ITを利用した業務や財務報告に適切に対応することです。
6つの基本的要素については、別の記事で一つずつ解説します。
会社法と金融商品取引法の内部統制
日本の内部統制制度を実務で理解する際には、会社法に基づく内部統制と、金融商品取引法に基づく内部統制の双方を意識する必要があります。
会社法の内部統制は、会社全体の業務の適正を確保する体制を対象とするものです。
一方、金融商品取引法の内部統制は、上場会社の財務報告に係る内部統制について、経営者が評価し、内部統制報告書として提出する制度です。
両者は関連しますが、対象、目的、監査、開示の位置づけが異なります。
この違いについては、別の記事「会社法の内部統制と金融商品取引法の内部統制は何が違うのか」で詳しく解説します。
上場会社にとって内部統制が重要な理由
上場会社は、多くの投資者や利害関係者から信頼される存在であることが求められます。
そのためには、財務報告の信頼性、適切な情報開示、法令等の遵守、リスク管理、内部監査、コーポレート・ガバナンスが欠かせません。
内部統制が形骸化すると、決算誤謬、不正会計、開示遅延、法令違反、資産流出、情報漏えいなどのリスクが高まります。
一方で、内部統制が適切に整備・運用されていれば、業務の透明性が高まり、問題の早期発見・是正にもつながります。
内部統制は、単なる規制対応ではありません。上場会社が継続的に成長し、市場や社会から信頼されるための経営基盤です。
まとめ
内部統制とは、会社の目的を達成するために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスです。
内部統制は、J-SOX対応や監査対応だけを意味するものではありません。会社の業務を効率的に進め、報告の信頼性を確保し、法令等を遵守し、資産を守るための基本的な仕組みです。
内部統制には、4つの目的と6つの基本的要素があります。これらを理解することが、上場会社の内部統制実務を学ぶ第一歩となります。
次回は、内部統制の4つの目的である「業務の有効性及び効率性」「報告の信頼性」「事業活動に関わる法令等の遵守」「資産の保全」について、実務上のイメージを交えながら解説します。



コメント