内部統制の4つの目的とは
- 4月2日
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はじめに
前回の記事では、内部統制とは、会社の目的を達成するために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセスであることを解説しました。
内部統制には、基本的に次の4つの目的があります。
業務の有効性及び効率性
報告の信頼性
事業活動に関わる法令等の遵守
資産の保全
内部統制というと、上場会社ではJ-SOX対応や財務報告の信頼性に目が向きがちです。しかし、内部統制はそれだけを目的とするものではありません。
業務を効率的に進めること、正確で信頼できる情報を報告すること、法令等を遵守すること、会社の資産を守ること。これらは、いずれも会社が継続的に事業を運営し、社会から信頼されるために欠かせない要素です。
本記事では、内部統制の4つの目的について、上場会社の実務担当者にもわかりやすく整理します。
1. 業務の有効性及び効率性
1つ目の目的は、業務の有効性及び効率性です。
これは、会社の事業目的を達成するために、業務が有効かつ効率的に行われるようにすることを意味します。
内部統制というと、「承認を増やす」「チェックを厳しくする」といったイメージを持たれることがあります。しかし、本来の内部統制は、業務を止めるためのものではありません。むしろ、会社の業務を適切に、かつ効率的に進めるための仕組みです。
たとえば、販売業務であれば、受注、出荷、請求、入金管理が適切につながっていることが重要です。購買業務であれば、発注、検収、請求書確認、支払処理が、必要な承認を経て正しく行われる必要があります。
業務手順が明確であれば、担当者が変わっても一定の品質で業務を継続できます。承認権限が整理されていれば、誰がどの範囲で判断できるのかが明確になり、不要な手戻りや属人的な判断を減らすことができます。
一方で、内部統制を過度に重くすると、業務スピードが落ち、現場の負担が大きくなることもあります。
そのため、内部統制を整備する際には、単にチェックを増やすのではなく、リスクの大きさに応じて、必要十分な統制を設計することが重要です。
2. 報告の信頼性
2つ目の目的は、報告の信頼性です。
上場会社は、財務諸表、有価証券報告書、決算短信、適時開示資料、統合報告書、サステナビリティ情報など、さまざまな情報を社内外に報告しています。
これらの情報は、投資者、金融機関、取引先、従業員など、多くの利害関係者の意思決定に利用されます。
もし、会社が公表する情報に重要な誤りがあれば、投資判断を誤らせるだけでなく、会社の信用を大きく損なう可能性があります。
特に、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度では、上場会社の財務報告に係る内部統制が中心的なテーマとなります。
たとえば、次のような業務は、財務報告の信頼性に大きく関係します。
売上計上
仕入・外注費の計上
在庫評価
固定資産管理
引当金の計上
税効果会計
連結決算
開示資料の作成
決算整理仕訳のレビュー
財務報告の信頼性を確保するためには、経理部門だけでなく、営業、購買、製造、物流、人事、情報システム、子会社管理部門など、多くの部門が関係します。
たとえば、売上計上の正確性を確保するには、経理部門の会計処理だけでなく、営業部門の契約管理、出荷部門の出荷記録、顧客からの検収情報なども重要です。
また、近年は、財務情報だけでなく、非財務情報を含めた報告の信頼性も重要になっています。サステナビリティ情報、人的資本情報、コーポレート・ガバナンスに関する情報など、投資者が企業を評価するために利用する情報は広がっています。
したがって、上場会社では、財務報告に加えて、会社が公表する情報全体について、信頼性を確保する意識がますます重要になっています。
3. 事業活動に関わる法令等の遵守
3つ目の目的は、事業活動に関わる法令等の遵守です。
会社は、さまざまな法令や規範のもとで事業を行っています。
たとえば、上場会社の実務では、次のような法令等が関係します。
会社法
金融商品取引法
税法
労働基準法などの労働関係法令
個人情報保護法
独占禁止法
下請法
不正競争防止法
業界ごとの規制
取引所規則
コーポレートガバナンス・コード
社内規程や行動規範
法令違反やコンプライアンス違反が発生すると、行政処分、課徴金、罰則、損害賠償といった直接的な影響が生じる可能性があります。
それだけではありません。取引先からの信用低下、顧客離れ、株価下落、採用力の低下、従業員の士気低下など、会社の事業継続や企業価値に大きな影響を及ぼすこともあります。
そのため、法令等の遵守は、単に法務部門やコンプライアンス部門だけの課題ではありません。
営業部門であれば、契約内容、表示・広告、取引条件、反社会的勢力排除、下請法対応などが関係します。人事部門であれば、労働時間管理、ハラスメント対応、個人情報管理などが関係します。経理部門であれば、会計基準、税法、開示規則、インサイダー情報管理などが関係します。
内部統制の観点では、社内規程の整備、承認手続、教育研修、通報制度、内部監査、監査役等への報告体制などを通じて、法令等を遵守する仕組みを構築し、運用することが重要です。
4. 資産の保全
4つ目の目的は、資産の保全です。
会社の資産には、現金預金、売掛金、棚卸資産、固定資産、投資有価証券、知的財産、情報資産など、さまざまなものがあります。
資産の保全とは、これらの資産が、正当な手続と承認のもとで取得、使用、処分されるようにし、不正、誤謬、紛失、盗難、無断使用、情報漏えいなどから守ることをいいます。
たとえば、次のような取り組みは、資産の保全に関係します。
現金・預金残高の照合
売掛金の回収管理
滞留債権の確認
棚卸資産の実地棚卸
固定資産台帳と現物の照合
契約書や重要書類の管理
印章管理
システムのアクセス権限管理
機密情報・個人情報の管理
資産の保全は、経理部門だけで完結するものではありません。
たとえば、売掛金の回収管理には、営業部門と経理部門の連携が必要です。棚卸資産の管理には、購買、製造、物流、販売、経理など複数部門が関係します。情報資産の保全には、情報システム部門だけでなく、全社員の情報管理意識が関係します。
内部統制が不十分な場合、会社の資産が不正に流出したり、実在しない資産が帳簿に残ったり、重要な情報が外部に漏えいしたりするリスクがあります。
したがって、資産の保全は、財務報告の信頼性や法令等の遵守とも密接に関連する重要な目的です。
4つの目的は相互に関連している
内部統制の4つの目的は、別々に存在しているように見えますが、実務上は相互に関連しています。
たとえば、販売プロセスを考えてみます。
取引先審査を行い、契約内容を確認し、出荷記録と請求内容を照合し、入金を管理する仕組みが整っていれば、次の効果が期待できます。
業務が効率的に進む
売上や債権残高が正しく記録される
契約違反や法令違反を防ぎやすくなる
売掛金という資産を保全できる
このように、1つの業務プロセスの中で、4つの目的は同時に関係しています。
内部統制を考える際には、「これはJ-SOX対応だから経理だけの問題」「これはコンプライアンスだから法務だけの問題」と切り分けすぎないことが重要です。
会社全体の業務の中で、どのようなリスクがあり、どの目的に影響するのかを考えることが、実効性のある内部統制につながります。
上場会社の実務で意識したいポイント
上場会社の内部統制実務では、特に「報告の信頼性」、なかでも財務報告の信頼性が重要なテーマになります。
しかし、財務報告の信頼性は、経理部門だけで確保できるものではありません。
売上、仕入、在庫、固定資産、人件費、システム、子会社管理、決算・開示など、会社の多くの業務プロセスが財務報告に影響します。
そのため、内部統制担当者は、財務報告に直接関係する統制だけでなく、業務の有効性、法令等の遵守、資産の保全との関係も意識する必要があります。
また、内部統制を整備する際には、次のような視点が重要です。
業務目的は明確か
重要なリスクは識別されているか
リスクに対応する統制は設計されているか
統制は実際に運用されているか
証跡は残っているか
問題が発見された場合に報告・改善される仕組みがあるか
内部統制は、規程やチェックリストを作成して終わりではありません。日々の業務の中で運用され、必要に応じて見直されることで、はじめて機能します。
まとめ
内部統制には、次の4つの目的があります。
業務の有効性及び効率性
報告の信頼性
事業活動に関わる法令等の遵守
資産の保全
これらは、会社が健全に事業を運営し、社会から信頼されるために欠かせない目的です。
上場会社の実務では、財務報告の信頼性が中心的なテーマになりやすい一方で、業務の効率性、法令等の遵守、資産の保全も密接に関係しています。
内部統制を理解するうえでは、4つの目的を別々に覚えるだけでなく、実際の業務プロセスの中でどのように関連しているのかを考えることが重要です。
次回は、内部統制の6つの基本的要素である「統制環境」「リスクの評価と対応」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」「ITへの対応」について解説します。



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